観光過疎地に必要な“ITの取込み” “インバウンド対策” “関係人口対策”

地方の観光地は、近年深刻な過疎化に直面しています。
少子高齢化や人口流出によって活気が失われ、地域経済の衰退にもつながっています。
そんな状況を打開するためには、従来の観光戦略だけではもはや十分ではありません。

そこで地域のまちおこしコンサルタントとして、観光過疎地を救うための新たな切り札として、「ITの取り込み」、「インバウンド対策」、「関係人口対策」の3つのキーワードを軸に、具体的な取り組み事例を交えながら考察していきます。

 ITの取り込み:情報発信と利便性を高め、観光客を呼び込む

近年、インターネットやSNSの普及により、旅行に関する情報収集はオンラインが主流となっています。観光過疎地にとって、これは大きなチャンスです。

例えば、地域の観光情報を充実させたウェブサイトや、スマートフォンアプリを開発することで、遠方からの訪問者にも情報を提供できます。
また、バーチャルツアーやオンライン体験を提供することで、実際に足を運ぶ前に地域の魅力を前もって体験してもらうことが可能です。

具体的な事例として、岐阜県の白川郷では、オンラインでのバーチャルツアーを通じてその美しい合掌造りの家々を世界中の人々に紹介しています。
この取り組みにより、実際に訪れる観光客の興味を引き、訪問を促すことができます。

ITの取り込みとしては他にも下記が考えられます。

魅力を発信するウェブサイト・SNSの構築: 地域の美しい風景、歴史、文化、グルメなどを写真や動画で効果的にアピールしましょう。
英語や中国語などの多言語対応も重要です。

オンライン予約・決済システムの導入: 宿泊施設や観光施設の予約・決済をオンラインで可能にすることで、観光客の利便性を高め、予約率の向上にもつながります。

AIチャットボットの導入: 観光客からの質問に24時間365日自動で対応できるAIチャットボットは、人件費削減にも効果的です。
多言語対応のチャットボットも開発されています。

VR・AR技術を活用した疑似体験: 実際に現地を訪れる前に、VR・AR技術を使って観光地を疑似体験できるコンテンツを提供することで、観光意欲を高めることができます。

インバウンド対策:海外からの観光客をターゲットに

インバウンド対策とは、海外からの観光客をターゲットにした取り組みです。
言語のバリアを低減するために、多言語対応の案内板やメニューを用意することが有効です。
さらに、外国人観光客のニーズに合わせたイベントやプロモーションを行うことも重要です。

日本政府は、2030年に訪日外国人観光客4千万人を目標に掲げています。
観光過疎地にとっても、インバウンド対策は大きなチャンスです。

例えば、北海道のニセコは、積極的に外国人スキーヤーを対象にしたキャンペーンを実施し、冬の観光シーズンに合わせた特別プランを提供しています。
これにより、多くの外国人観光客が訪れるようになりました。

訪日外国人観光客のニーズに合わせた観光プランの開発: 外国人観光客のニーズを調査し、そのニーズに合わせた観光プランを開発しましょう。
例えば、イスラム教徒向けのハラルフードを提供するレストランや、英語対応可能なガイドツアーなどが考えられます。

訪日外国人観光客向けの情報発信: 訪日外国人観光客向けのウェブサイトやSNSアカウントを作成し、日本語だけでなく英語や中国語などの多言語で情報を発信しましょう。

訪日外国人観光客向けのインフラ整備: 外国人観光客が安心して滞在できるよう、多言語対応の案内板や標識を設置したり、Wi-Fi環境を整えたりしましょう。

事例)京都市: 訪日外国人観光客向けの多言語対応型観光案内所を設置し、観光客からの質問に多言語で対応しています。また、英語や中国語の観光ガイドツアーも開催しています

関係人口対策:新たな住民との関係構築

関係人口とは、その地域に住んでいないけれども、何らかの形でその地域と関わりを持つ人々のことです。例えば、過去に観光で訪れた人や、地元の特産品を購入する人などがこれにあたります。
これらの人々に対して定期的な情報提供やイベントの招待を行うことで、長期的な関係を築き、地域への再訪や支援を促すことができます。

また、近年、地方移住や二拠点居住への関心が高まっています。観光過疎地にとって、関係人口は地域活性化の重要な担い手となります。
地方移住や二拠点居住については下記が考えられます。

移住・二拠点居住希望者向けの移住・二拠点居住支援制度の充実: 移住・二拠点居住希望者向けの住宅情報提供、仕事探し支援、地域住民との交流促進など、移住・二拠点居住をサポートする制度を充実させましょう。

関係人口向けのイベント開催: 移住・二拠点居住希望者向けの交流イベントやワークショップを開催することで、地域の魅力を伝え、移住・二拠点居住への意欲を高めることができます。

関係人口との連携による地域活性化: 移住・二拠点居住者と連携して、地域おこしイベントや事業を企画・運営することで、地域全体の活性化を図ることができます。

具体的な取り組みとして、長野県のある村では、地元のリンゴ農家がメーリングリストを作成し、リンゴの収穫時期には特別なイベントに過去の訪問者を招待しています。
これにより、リピーターを増やすとともに、地域の魅力を広める助けとなっています。

鳥取県では 「鳥取移住・二拠点居住コンシェルジュ」を設置し、移住・二拠点居住希望者向けの移住・二拠点居住支援を行っています。
また、移住者向けの交流イベントやワークショップも開催しています。

まとめ

観光過疎地を救うためには、従来の観光戦略だけではもはや十分ではありません。
地域おこしのためには、時代に合った新しいアプローチが求められます。
ITの活用、インバウンド対策、関係人口の増加によって、多くの地域で観光客を引き寄せ、地域経済を活性化させることが可能です。

但し、行政主導の通り一遍のものでは成功しません。
地域の方々の理解と協力なくしては成り立ちません。
地域まちづくりコンサルタントとして、地域の方々、行政の方々と伴走しながら進めていければと考えます。
過疎地でも新たな活力を生み出せるよう頑張りましょう。

おすすめの記事