講演 着地型観光で利益を上げる方法

講演趣旨

(一社)京都府旅行業協会青年部の依頼により
「着地型観光で利益を上げる方法」
~明日から出来る着地型観光、企画の作り方とお客様の喜ぶツボ、販売方法まで、全て教えます~
を講演いたしました。

今回は地元京都の旅行会社に向けての講演だった為、京都観光の現状からお話させていただき、
そこから見える課題、日本の旅行の今後について、業法改正について、着地型観光の成功事例、
着地型観光の課題・問題点などをお話させていただきました。

限られた人数の中だったため、有意義なお話をすることができ、翌日には早速、受講生からメールでお礼もいただきました。

今回はこの講演の中から一部を抜粋しお話させていただきます。

講演内容

京都観光の現状とそこから見える課題

京都では数年前から爆発的に外国人観光客が増え、いまやメジャーな観光地へ行けば日本人より外国人の方が多いところも出てきています。

超有名な金閣寺や清水寺では感覚的ですが、7~8割が外国人旅行客です。

そこへ修学旅行生がドッと来ればもう満員電車状態!

異様な光景となってしまいます。
実際は

また、
SNSなどでフォトジェニックな感じが有名になり
トリップアドバイザーで国内観光地5年連続一位の伏見稲荷大社では
8割がた外国人という日も珍しくありません。

外国語ばかりで日本語がほとんど聞こえず、
日本人のほうがまるで外国へ来たみたいな錯覚さえ覚えます。

これらは京都に限らず、有名な観光地ならどこでも起こっていることではないでしょうか?

京都では147万人の人口の市に、年間5200万人の観光客が来られます。

これらの人がわずか十数件の有名社寺に集まっていることを思うと混雑するのもあたりまえです。

一時、春休み、ゴールデンウィークや夏休みにグアムやサイパンに行くとビーチもスーパーでも日本人ばかりで、「ここはどこ?」って感じでしたが、せっかくお金と時間をかけて行ったのにほぼ日本では楽しさ半減ですよね。

それと同じで、
「せっかく、京都に、又は日本に来たのに外国人ばかりで京都・日本を十分に味わえなかった」
ということが起こり始めています。

法改正は、この状況を改善すべく出来たものだと思われます。
つまり、

  • 国家資格を持っていない人もガイドができるようになることで、色々なところに観光客を誘導できる。
  • 地域限定旅行業をもうけることで、着地型観光が増え、有名なところ以外にも観光客が流れる。

ことを期待されてのことだと思います。

国、地方ともに、この観光客の増加が一過性のものではないことをうかがわせています。

日本の旅行業の今後について着地型観光の関わり

そもそも観光立国の推進については、平成15年1月に小泉純一郎総理(当時)が「観光立国懇談会」を主宰し、その4月からビジット・ジャパン事業開始、平成18年 12月には観光立国推進基本法が成立していきます。

簡単に言えば
「どんどん外国人観光客を増やして経済活性化を図ろう!国内でも休日を増やして余暇を観光にあててもらい国内の人の行き来を活性化することで地方も潤う仕組みを作ろう!」
といったところでしょうか。

これが功を奏し現在に至っています。

上記の通り、
今後も多くの外国人観光客が押し寄せてくることが予想されます。

それに合わせ日本人の観光客減るかというと、そうでもありません。

ただ、日本人観光客についても、従来の有名社寺や名勝旧跡ばかり回る観光より、その土地での特別な体験、経験ができる旅行を求められてきています。

娯楽についても一昔前の男なら野球かサッカー、夏は海水浴、冬はスキーとお決まりでしたが、今やものすごく多様化されていますよね。

それと同じで、観光もお客様の要望が多様かれてきていて、観光客とひとくくりでは考えられないようになってきています。

自然の中を散策し森林浴を楽しみたい方、
産業観光で普段見れない工場などを見て回りたい方、
普段はオフィスワークばかりなのでものづくりにチャレンジしたい方、
地引網や木々の伐採など地場の体験、
地元ガイドと共に歩いて巡る街歩き体験、
又は被災地救援やゴミ拾いなどのボランティアを兼ねた旅行などなど
普通の旅行会社では全国にある施設へのこれらの要望にこらえるのは不可能です。

そこで、
地域の旅行会社が自地域のこれらの体験や施設などを探し出し、売り出す着地型観光が必要になってきます。

今までの地域の旅行会社が他の地域へお客様をお連れする発地型観光も無くなるわけではありませんが、
大型団体の縮小や減少により、規模は小さくなっていきます。

農協さんの旅行、老人会や婦人会の旅行が一昔前なら一度に10台20台のバスを出していたのが、
今や2・3台のバスでの移動が主流になってきている現実があります。

インターネットの普及により、他の地域から来られる客様に事前に宣伝する方法もできました。

より深掘りの少人数で充実した旅行の提案をしていくことで、利益を上げることも可能となってきています。

着地型観光で、まだまだ日の目を見ていない新たな観光の発掘により、観光客の分散にもなり地域経済へもより良い影響が見込めます。

着地型観光の成功事例

ツアー後お客様から握手を求められる「西陣の職人たちと出会う旅」

これは私が地域の方々との交流の中で生まれたツアーですが、
京都観光リピーターの方々に好評でツアーの最後には必ずと言ってよいほど「ありがとう!」と握手を求められます。

【ツアーの成り立ち】

私は生まれも育ちも「西陣」ですが、私が小さな頃はご近所の大半が西陣に関わるお仕事をされていて、
朝早くからガシャンガシャンと機を織る機械の音が響き渡っていました。

ただ、現在では着物を着られる方も減り、産業としても衰退の一途で今や伝統産業といわれるようになり寂しい限りです。

そこで少しでも西陣織について”どんな方がどんな風に”製作に関わっているのかを知ってもらおうと思い取り組ませていただきました。

完成品はお店でも見れるので、
製品そのものより、出来上がる行程と係っている人を見てもらいたい!と思いました。

また、ただの街歩きではなく、色々な工場に立ち寄り地元の方々と語り合ってもらうことで
ものを見てもらうだけでなく、人との出会い”を大切に感じていただければと考えました。

【ツアー内容】
西陣のお寺で集合、時間があればお寺のいわれなどもご説明。

皆様お揃いになられましたら、歩いて私の住んでいる地域を回りながら
「昔はここは〇〇でした」
「京都の町並みは〇〇で・・」
「私の小さい時はこの辺りは〇〇・・・」など
お話をしながら気が付けばある町工場の前、
「ではここに入らせてもらいましょう!」
と言いながらズカズカと入って行きます。

お客様は「こんなとこに急にお邪魔していいの?」
って感じですが、気にせず工場のオッチャン、おばちゃんに仕事の話を聞きながら作業風景を感じとってもらいます。

で、またぶらぶらお話しながら歩いて次の工場へといった具合です。

「ブラタモリ」や「鶴瓶に乾杯」のような感じですね。

午前、又は午後の半日のコースとなっています。

結果、工場に入らせて頂きお話をして頂くため、あまり頻回にツアーをする訳にはいきませんが、参加した頂いたお客様からは絶賛をいただいております。

大手の旅行会社ではできないこと、オンリーワンのツアーを目指すことがお客様の目を引くことにつながると思います。

おかげさまで平成23年には京都府の着地型旅行「京都匠の巡礼」で最優秀賞をいただくこともでき、
またテレビや雑誌でも取り上げていただくことができました。

このツアーは私が普段歩いているところをただお客様と案内付で歩き、近所の方の工場を見せてもらうということのみです。
特に奇をてらったことはしていません。
自然体だからこそ良いのだと思っています。

あなたの身近なところにも、自分では普通の営みに感じていることが観光という視点で見るとお客様には新鮮で新しい発見がたくさん詰まった場所になる可能性が大いにあります。

お客様に感動を与える場所を貸切る観光

【ツアーの成り立ち】

観光都市京都にはおかげさまで多くの観光のお客様が来られますが、その分リピーターのお客様などからは
何処へ行ってもひとが多くて・・・とのお声を頂きます。

それなら、
人のいない時間、場所へお連れしたら喜んでもらえる!と考えたのが貸切です。

具体的には時間とは
お寺なら拝観時間前や拝観時間終了後、
場所では非公開や通常営業していないところです。

皆さん、
できないことをしたい!、
見れないものを見たい!
でしょ。

その為には少々高くても他の方ができないんだから仕方ない。

ここに定価は存在しないんです。

広く浅くではなく、
特別なお客様に限定で至福の喜びを提供する
こんなのもあってよいのではないでしょうか?

少々人脈が必要になってきますが、私はたまたま色々な異業種交流会に参加していましたので普段お付き合いの無い方でも連絡を取れる環境が少々できました。

皆さんも地元の人脈を活かしていかがでしょうか?

もちろん通年開催とはいきません。

お客様のご希望があった時、又は特別な時期(桜の咲く季節や紅葉、その他花々の開花時期など)
に合わせてひそかな開催となります。

これも地元で人脈を築いてきたからこそ、皆さんの地域でも
「こんなのできたらいいのになぁ」ということはあるはずです。

着地型観光の課題・問題点

もちろん、いいことずくめのお仕事がそうそうあるわけではありません。

着地型旅行でも下記に上げるような点には注意が必要です。
ただ、これらは最初に知っておき、
注意しながらものごとを進めて行けば解決できます。

まずは知ることから始めましょう。

自己満足だけになりお客様が付いてこない場合がある

これはボランティアガイドさんに良くあることですが、
自分の知っていることを全てお客様に伝えようと張り切るあまりお客様が求めていない内容にまで踏み込み
お客様からすれば「なんか違う!」「話がくどい」となってしまことが良くあります。

たくさん伝えたい、知ってもらおう!
というのは大切ですが、お客様の様子やどこから来られたか、どんな旅行をされているのか、何に興味を持っておられるのか、どのくらいの時間を費やしてよいのかなどをさりげなく伺いながら、一方的な話ではなく会話のキャッチボールを楽しむ感じで進めていく方が喜んで頂けます。

単純にわかりやすい例では
アジアのお客様に「このお寺は〇〇年、〇〇という偉い方の開基で、・・・」と説明しても「だから?」という感じになります。

それより「〇年前の建物で、この前の修復では〇千万円かけいるんです。

ここから写真撮るとキレイに映えますよ!」と話を持って行く方が喜んで頂けます。

欧米のお客様ではこれが逆でどういった人物が何のために…などという深読みが喜ばれたりまます。
(もちろん個々人により違います。一般論です。)

同じ場所でもお客様に合った内容でのご案内を!

机上の理論は通用しない ネタ探し(企画)は足で回ること

いまどき、インターネットで調べればたいがいのことがわかります。

しかし、それだけではお客様には通用しませんし、開催しているこちらも面白くないものになります。

企画では現場を回り人と会い色々な話を時間をかけて引き出していくことを心掛ければ絶対にそれらが実際のツアーに生きてきます。

インターネットの情報はお客様も知っておられます。

同じ話でも、「ここは〇〇です。
というより、「こないだ和尚さんに会いお話を聞くと、ここは〇〇なんだそうです。
というのではだいぶん違いますよね。

ツアーでお客様をお連れして回っている時に偶然出会う方とも「〇〇さん、こんにちは!」
こちらの方は「この前、このツアーのことで相談に乗って頂いた〇〇さんで・・・」
とすると皆さん関心を持って頂いたりしますし、
ツアーに愛着を持って取り組んでいることをわかっていただけます。

人だけではありません、例えば林業体験なら、
ただ山林にお連れするだけではなく、
道中で「この前はここに〇〇が咲いていた」
「この辺りは〇〇の生息地で・・・」
「ここは春には〇〇で景色がいいんですよね」など地域やその場の情報を提供することで旅に深みが出ますし、こちらの人となりをわかって頂けるきっかけ作りになります。

集客方法

皆さんホームページさえ作ればすぐにお客様が見てくれて問合せがあると思われている方が意外に多いです。

実際はそれほど甘くはありません。

もちろんホームページは必需品ですが、しっかりとどんなキーワードでどんなお客様が来るのかリサーチしてから作り込まないと折角見栄えの良いホームページができても誰も見てくれなかったりします。

ホームページの作り込みによる集客が一番ですが、忘れてならないのが地元の方への広報です。

私はこのおかげでテレビ出演を果たしました。

それと、紙媒体も作成しておいた方が何かと広まり安です。

ホームページを見たお客様から「パンフレットありますか?」
と問合せされることもあります。

マスメディアに取り上げてもらう方法

OTA(オンライン・トラベル・エージェント)の利用
ホテル予約で有名ですが、トリバゴやエクスペディア、一休.com、じゃらんなどがこのOTAになります。

OTAではいま、オプショナルツアーや着地型観光についても販売を始めており、着地型観光をする旅行会社にも間口を広げています。
掲載は無料、成約になった際に手数料が引かれます。
集客には強い味方になります。

単価が安い

着地型旅行といえば単純な”街歩き”と思われがちです。
これはボランティアガイドさんの案内など。
これらはおおよそ一人当たり千円~3千円で1回に10人程度のお客様を集めて開催されます。

週末毎に3,000円×10人=30,000円を確実に集客できればこれはこれで週末起業としては良いと思いますが、現地下見や資料の作成、現地の方への謝礼など仕入が発生する場合などもありますので、少しでも単価アップを図りたいところです。

それには他社との競合を避け、独自のアイデア、商品を開発することが一番!

こんなのできたら面白いだろうな~を実現しましょう!

貴社だけしかできないオリジナルな企画で魅力的なものならいくらの値段を付けてもお客様は来られます。

逆に少々高い方が選ばれしお客様が来られ、ツアー内容自体もより魅力的になります。

広く多くのお客様を呼び込むべきか、少人数でも高単価のお客様を呼ぶのか、最初の企画段階でじっくり練り上げるとこが成功の分かれ目となります。

おすすめの記事